立体記紀 -日本神話における物語の空間化-
これは古事記を建築化するというほぼ不可能と思われることに挑戦した意欲的な作品である。敷地選定から空間構成、動線、スケール、光、構造、素材いずれをとっても正解や拠り所がなく、評価が大きく分かれることは明らかであった。そのような答えのない問いを考え続け、自分なりの論理で形や空間に落とし込み、ある世界観として表現したことは評価に値する。完成した作品は半分が山に埋もれ、取り上げた8つの神話の多くはインテリア空間として現れる。通常、神社は外から参拝するためシンボル性が重視されるのに対し、この作品は内部空間がもつ物語性を活かしている。そういった点で伝統と近代の止揚をインテリアにより実現したといえるかもしれない。
担当教員:愛知淑徳大学 諸江 一紀 先生